- 研究活動
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- ◆環境の不確実性と動機付けのダイナミズムに関する研究
不況による労働条件の悪化、労働形態の多様化、社会的価値観の変容等、様々な意味で従業員を
取り巻く環境の不確実要素が高まる中で、本研究は、このような状況における従業員の動機付けや
行動の変化メカニズムの分析、及び国際比較を通して、危機脱出のための臨機応変かつ効果の高い
人的資源管理政策の提案を行う。
目 的
(1)環境の不確実性と動機付けの変化、組織行動の変化のダイナミズムモデルを提示し検証する
(2)ダイナミズムモデルの各国企業や教育機関の国際比較
(3)国際比較を通じて危機脱出への人的資源政策の助言を行う
具体的には、不確実性要素の推移に対する認識と従業員の動機付け・組織行動の変化の関連性を
時系列的かつ動態的に捉えて両者の関連性を明らかにする。経済危機等の負の要素に対する認識が
深刻であれば、従業員モチベーションは低いと考えられるが、これだけであれば、企業の対策とし
てなす術が無い状態となるため、両者の間のさまざま媒介・仲介要素について検討することを重視
した。例えば、経済危機脱出への期待、個人のパーソナリティ・価値観・社会的選択肢の有無、具
体的な組織の施策等、様々な要素は、両者の間の媒介・仲介変数になると考えられるが、これらの
予想される要因を分析することで、様々な不安要素と職場モチベーション間関係の緩和要素ること
ができる。また、経済危機直前、形成期、延長期、脱出へのチベーション間関係の緩和要素を分析
することができる。また、経済危機直前、形成期、延長期、脱出への転換等、異なるステージにお
いて職場モチベーションの違いも考えられるが、このような推移期間と動機付けの関連性を、先述
した媒介・仲介変数を加味して分析する。経済危機でも企業を取り巻く環境と企業自身の内在的要
素の違いによって、従業員の認識ギャップが生じる可能性があるので、このようなオープン・シス
テムの影響を分析することも含めて検討をする。
- ◆グローバルビジネスにおけるリーダーシップの構築・継承プロセス
本研究では、主に実証調査を基に日系企業の海外トップマネジメントの構築・継承プロセスの分
析を行った。具体的には、下記の四点である。
(1)異なる進出段階の企業への調査により、有効なリーダーシップの構築策を探索することがで
きた。特に、グローバルビジネスの分析に当たって、環境等のコンティンジェンシー要因を
掘り下げて、企業の進出段階によって有効なリーダーシップ構築策の違いを注目した。製造
業を例に考えると、創業、技術中心段階、営業初期、販売拡大、安定など企業成長段階によ
って求められている人材像、企業のミッションも変わるので、リーダーシップ構築の有効策
も異なると考えられる。
(2)今迄重視されていなかったリーダーシップの継承プロセスの問題がクローズアップされる中
で、個人が持つそれまでの経験知が中心となり、蓄積された知識の伝達は置き去りにされて
いることがわかった。
(3)日系企業のグローバル戦略転換にあわせてリーダーシップモデル再構築の必要性が明らかに
なった。従来の役割分担の構造を維持している一部の企業では、日本人を中心とするトップ
リーダーの育成が有効であるのに対して、新たな枠組みの探索が必要な場合、海外出身のリ
ーダーの積極的育成が必要だと思われる。
(4)グローバルリーダーシップの研究において、従来の単一的な分析単位ではなくて、マルチレ
ベルの分析をすることによって、新たな理論研究の方向が示唆されている。
- ◆上海万博の経営人類学的研究
本研究では万博における企業または機関による共同出資と共同展示との新しい展示形式を注目し、
日本産業館、上海企業連合館と韓国企業館の比較することによって、企業のコーポレート・アイデ
ンティティと公共イメージについての分析を行なった。特に、公共の場での企業のコーポレート・
アイデンティティの展示形式を取り上げた。上海企業連合館が上海市の発展を通して企業の集合的
アイデンティティを重視するのに対して、日本と韓国は関係企業独自のアイデンティティのコミュ
ニケーションが特徴的である。また、展示形式によって、日本企業と韓国企業の個別企業としての
アイデンティティの顕著性が異なることも明らかになった。
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